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都市再生と若宮大通
 「都市再生」という言葉が新聞紙上等を賑わしている。これも構造改革の一環であり、「20世紀の負の遺産の解消」と「21世紀の新しい都市創造」を目的としている。名古屋に目を転じた場合、戦災復興事業や土地区画整理事業により、都市基盤の水準は高い。確かに不要となった貨物ヤード(笹島地区)や木造密集市街地(太閤地区・米野地区)のような都市再生が求められるエリアもあるが、もう一方で「20世紀の正の遺産」とでも言うべき都市基盤を今日的に有効活用することも「都市再生」の大テーマである。

 その代表例が百米道路であろう。名古屋には南北1.75kmの久屋大通と東西3.90kmの若宮大通がある。それらは第二次世界大戦による戦火の教訓から、都心部を大きく4分割する防火帯(二つの大通りは逆T字になっているが、久屋大通の南は新堀川につながり、十字となる)として整備され、今や名古屋のシンボルとして、全国的に有名である。

 2本の百米道路のうち、久屋大通はテレビ塔や戦災復興記念モニュメント(テレビ塔にむけたレーザービームを含む)、イベント空間、緑地空間があり、沿道には百貨店や専門店が並び、また幅員の広い歩道を活用したオープンカフェの実験も行われるなど、その「正の遺産」を有効に活用している。しかしながら、若宮大通は未だイメージが明確でなく、それゆえ「正の遺産」の活用も中途半端に終わっている。今、若宮大通の西端では「ささしまライブ24」のプロジェクトと、東端近くには都市公団と民間企業による千種二丁目地区(サッポロビール工場跡開発)の再開発プロジェクトの2大プロジェクトが進められようとしている。さらに、そこには科学館、美術館、ランの館、吹上ホールなどの公共施設、大須、パルコ、ナディアパークなどの商業核、若宮八幡や政秀寺などの神社仏閣、映画館やボーリング場などの娯楽施設、名大や名工大などの大学が立地しているのだが、延長距離が長く、高速道路や鉄道・河川などで分断されているせいか、それらの存在感が薄くとらえられ勝ちである。生活の視点からみると、若宮大通から西の名駅へ行く途中には出雲殿があり、若宮大通の東突き当たりには愛昇殿がある。「ゆりかご」から「墓場」ならず、「結婚式」から「葬式」までワンセット揃ったエリアでもある。ポテンシャルは十分である。

 今日を生きる我々に課せられたテーマは、この若宮大通をモデルにしながら、「正の遺産」とポテンシャルを活用して、明確なコンセプトを持った21世紀の都心軸をいかに形成していくかではなかろうか。そうしなければ、都市再生は実現できず、先人たちや未来の人たちからの謗りは免れないであろう。
(2001.11.19/井沢知旦)