愛知万博に向けて、瀬戸市が中心になって尾張瀬戸駅前にホテルと公共施設を含んだ駅前再開発ビルの計画を進めていたが、ホテル誘致断念により暗礁に乗り上げてしまった。そこで、市民参加により駅ビルの機能を一から話し合って決めようと結成されたのが「駅ビル検討ワーキンググループ」である。
自分たちのまちにとってどんなビルが必要か、そのビルによってどんな未来が描けるかといった議論は参加者にとって刺激的で、盛んな話し合いがなされてきた。しかし、実際には巨額で重要なプロジェクトであり、採算性や他の計画との関連性、地域経済との結びつきなど、回を重ねるごとに専門的になっていき、議論が行き詰まる場面も多くなってきた。
私はそうした場面を見て、市民参加による建物づくりを行う上では、ぜひ建築家を参加させていただきたいと思う。多くの建築家は、これからの建築はどんな建築を造るかより、なぜそれを造り、どうやって使い続けていくかが重要であると思っている。それは単なる設計から抜け出し、建築行為が社会へ貢献することを願っているからである。しかし、現在の設計業務では、図面を描くことが精一杯で、それ以上の意味を考える余裕はない。
今後、市民参加による建物づくりに建築家が参加していければ、建築物がデザインや技術だけではない評価がされるようになっていくだろう。それは、現在の閉塞的な建築界の空気を破る1つのカギとなるだろう。
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