大須商店街は、地で生まれ育った商店主達の地道な活動の積み重ねの結果、「元気な商店街」として近年非常に注目を集めている。新旧が渾然一体となったユニークな商店街として、人が集まり、メディアも再三「大須の良さ」を取り上げる。そのことがまた話題を呼び、人を集めるといった様に、スパイラル的に発展しているかのように見受けられる。
確かに、全国の多くの中心商店街が衰退化傾向のなかで空き店舗対策等に四苦八苦している状況にあって、大須では、出店を希望するテナントが多く、空き店舗はほとんどない。万松寺通り等に出店できないテナントが路地に出店するなど、逆に店舗が増加している。
定休日以外の日にシャッターをおろしたり、売り出しのチラシを出したりすると、不動産屋が「店じまい」と勘違いし、「店舗を良い条件で貸しませんか」と勧誘に訪れるというほどの過剰ぶりである。このため、賃料条件は鰻登りに上昇し、月額3〜4万円/坪との声も聞く。最近発表された地価公示で大須の地価が上昇したのもこうした背景があるからであろう。
他の商店街から見ればうらやましい状況と思われるが、本当にそうであろうか。新しいテナントが入ることで商店街が活性化するのも事実である。しかし、一方で、賃料負担力のあるテナントにこれまで生業でがんばってきた地の商業者が駆逐されていく側面もある。商売をしているよりテナントに貸した方が有利という理由で不動産経営に切り替える商業者も徐々に増加している。生業の集団であるがゆえに、高い賃料に耐えうる経済効率が求められるテナントにはない魅力を持ち、また、地でがんばらざるを得ないパワーが大須商業者の強みではないだろうか。テナントは、賃料負担に見合う利益が思うほどあげられなければ、撤退も早い。チェーン展開しているテナントは、個店の利益を優先するあまり、地の商業者と一緒になって地域活動を盛り上げていく姿勢にかけているものが多い。大須がこれまで培ってきた商業者の活動基盤が崩壊することにもなりかねない。賃料の高さのみでテナントを誘致する危険性がそこに潜んでいる。テナント導入にあたっては、すべてとはいわないまでも、地でかんばって行く意欲・覚悟のある商業者を選別・育成していく街のマネージメント機能が今こそ求められている。 |