名古屋の都心部で多数のクレーンが立ち上がっている姿は、JRセントラルタワーズが完成して以来、あまり見かけなくなった。それだけ建設投資が冷え込んでいる。そんな中で標記の事業コンペが始まった。
当該地区周辺は、猿投山の伏流水が湧き出るため、吹上や古井の坂などの水に関わる地名をとどめている。当該跡地は、この水を利用して、大正13年以来ビール生産75年の歴史を刻む。名古屋都心栄から東南東へ1.6kmに位置し、ちょうどJR中央線と百米道路の一つである若宮大通との交点にある。約8.4haの敷地規模を有し、都心近傍にこれだけの規模の開発可能用地は、笹島地区をはじめ、もはや数えられるほどしかない。
住宅・都市整備公団から都市基盤整備公団に改組してからの有数な事業であるため、新しい事業スキームが導入されている。「整備計画共同企画方式」がそれである。公団の整備方針を受けて出された企画提案のなかから共同開発事業者を選定し、共同で整備計画を策定、その計画に基づき公団は基盤整備と賃貸住宅の供給(500戸〜)、事業者は施設等を建設するものである。
二本の百米道路、若宮大通と久屋大通は名古屋のシンボルであり、久屋大通は名古屋都心の顔としての役割を担っている。それに対し若宮大通は都市高速道路が走るものの(走る故に?)、今ひとつ明確なイメージが沸かない。若宮大通の西端に整備予定の笹島地区が、その東端に当該地区があり、その軸に大須や栄南、アミューズメント施設、白川公園や鶴舞公園、大学などが接する。こんな地域の資源を生かして、どのようなイメージをこの若宮大通に描くことができるのか。そのために、約千戸の住宅に加えて、なんの都市機能を付加できるのか。この「サッポロビール名古屋工場跡地」開発は、ちょうどオセロゲームのコーナーを押さえる役割があるのではなかろうか。
都市基盤整備公団のサッポロビール名古屋工場跡地の概要や企画提案のための整備方針等の内容は、下記のホームページを参照
http://www.udc.go.jp/chikusa |