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築地地区のまちづくり(その1)

1.築地地区の概要

 築地地区の歴史は、明治後期に名古屋港の開港に伴って埋め立てられたことに始まる。1907(M40)年に名古屋港が開港し、以来、「港まち」として発展した。しかし、昭和30年代以降、船舶の大型化、港湾機能の拡大に伴い、旧来の港湾施設では対応できなくなり、港湾機能の沖合展開がすすめられた。1968(S43)年に金城ふ頭コンテナ岸壁が供用開始されると、築地地区の港湾機能の低下、商業・業務機能の停滞、人口の流出が顕著となった。

 このような中で、昭和40年代後半以降、市民に親しまれるみなとづくりが課題として取り上げられるようになり、これまでに、ガーデンふ頭緑園(1983)やポートビル、海洋博物館(1984)がオープンし、1989(H1)年には、世界デザイン博覧会の会場となり、港に対する市民の関心が高まってきた。さらに、1992(H4)年には、名古屋港水族館がオープンし、今日では年間300万人もの人々が港を訪れるようになっている。

 また、当地区には、多くの人々でにぎわう港まつりなど様々なイベントがある。港まつりは地元の人々が一体となって取り組むまつりであり、その取り組みがまちづくりの源泉になっているともいえる。

2.行政のまちづくりのとりくみ

 まちづくりの取り組みは、まず行政のとりくみから始まった。1980(S55)年に、名古屋市の総合計画の中で、築地地区が地区総合整備事業に位置づけられ、まちづくりの総合的な取り組みが展開された。名古屋港に至るメイン道路は50mに拡幅され、緑道が整備された。道路拡幅に伴い、沿道では市街地再開発事業や地区再開発促進事業が取り組まれた。また、その背後地の生活道路が不足していた地区では、住環境整備事業も実施されるようになった。これらの事業を展開していくための、現地事務所が1984(S59)年度に設置され、より地域に密着した事業の展開が図られるようになった。

 1990(H2)年には都市景観整備地区に指定され、海の玄関口にふさわしい顔づくりに取り組むようになった、さらに、翌年には、@世界に開かれた海の玄関口にふさわしい魅力ある港まちづくり、A市民に親しめる海洋文化・レクリエーションの拠点づくり、B地域の発展の核となる活力あるまちづくり、をねらいとした「築地ポートタウン計画」がとりまとめられた。

 また、1995(H7)年度には、名古屋市で3番目の福祉のまちづくりモデル地区に指定されている。 

3.市民のまちづくりのとりくみ

(1)まちづくりの会設立の経緯

 市民のまちづくりへの取り組みのきっかけとなったのは、再開発事業の実施に伴う地元組織として、1984(S59)年度にポートタウン1号地街づくりの会が発足したのがはじまりといえる。この会は、江川線沿いでの再開発事業の実現にむけ、行政と地主と地権者が一緒になって、まちづくりのをすすめるための地元地域のグループとして結成されたものである。

 この会を母体として、1986(S61)年度には、築地ポートタウン21まちづくりの会が発足した。この会は、築地地区全域の魅力あるまちづくりを考え、提案する組織として結成されたもので、当初は商店街を中心に構成されていたが、1992(H4)年度には、学区連絡協議会や地域に所在する法人の参加を得、地域全体で組織する団体に発展している。なお、1987(S62)年度には、都市景観市民団体の認定を受けている。

(2)まちづくり活動の展開

 名古屋市内でも活発な活動を行っている市民団体であり、年に数回の築地総合整備事務所、名古屋港管理組合との懇談会やまちづくりの先進地視察、魅力あるまちづくりの研究(講演会の開催、地域のイベントへの参画)を行っている。また、隔月でまちづくりニュースを発行しており、1997.11までに96号を発行している。

 これまでの主なとりくみとしては以下のようなものがある。

 ○1987(S62)年度:築地21世紀への夢〜港橋公園への提案

  • 築地地区の中心でもあり、堀川と中側運河を結んでいた旧運河にかかる港橋を中央部に据えた公園の整備構想を発表した。

 ○1989(H1)年度:宝島フェスティバルの実施

  • 世界デザイン博覧会において、築地地区全体を宝島にみたてたフエスティバルを開催。手作りのイラストマップも作成した。

 ○1992(H4)年度:ラブホテル建設反対

  • 地区内でラブホテルの建設問題が起こる。この運動をきっかけにまちづくりの活動が地元に浸透していったといわれる。

 ○1996(H8)年2月:まちづくりアンケート実施

  • 2100部配布、1,600票回収。地区のよいところ(残したいところ)、きらいなところ(改善したいところ)を聞いた。
(3)夢塾21の発足

 1996(H8)年8月、まちづくりの会が学区連絡協議会に呼びかけ、「福祉・景観」を中心テーマとした専門委員会を発足した。夢塾21はその専門委員会の愛称として、第3回の委員会の時に決定された。設立の背景としては、築地地区が福祉のまちづくりモデル地区に指定され、整備計画づくりが行われるとともに、平成9年10月の世界都市景観会議にむけて、都市景観市民団体として、市から取り組みの要請があったのを受けたものである。

 1996(H8)年度においては7回の専門委員会を開催し、景観・福祉をテーマとしたまちづくりの検討を行った。その中で市民を巻き込んだ活動としていくための試みとして2回のワークショップを開催した。

 「車いすタウンウォッチング」(96.11.2開催)は福祉の観点からまちの点検を行うもので、障害者の協力も得て、港コース、まちコースの2つに分かれ問題点のチェックをおこなった。

 「クリスマスタウンウォッチング」(96.12.21開催)は景観をテーマに築地地区のまちを見直そうというもので、楽しみながらまちを考える試みが行なわれた。

 当初1年間の活動として発足した夢塾21であったが、この取り組みを通じて、住民のまちづくりに対する関心がさらに高まり、1997(H9)年度においては、具体的なまちづくりの取り組みの第一弾として、稲荷公園の再整備の計画づくりをワークショップによって進めている。スペーシアもワークショップを進めるお手伝いをしているところである。


(1997.12.24/石田富男)