近年、地方分権化が進む中で、地域づくりに関して独自の条例を定めるケースが出てきている。まちづくり条例などの類がそれである。また、国も法令の改正などを通して自治体の条例による都市づくりの可能性を拡大するための対応を始めている。都市計画法、建築基準法などの個別の法令に基づく条例がそれである。
本書では、前者のように地方自治法に基づく自治権による条例を自主条例、後者のように個別法に基づく条例を委任条例と大別しながら、都市計画法、建築基準法、開発許可制度などまちづくりに関する法制度と条例との関係を、全国の豊富な事例を踏まえて詳述している。
さらに、条例によるまちづくりの展開の方向として、自主条例と委任条例の連携化や一体化など、それぞれの都市のニーズに応じて選択するべきだと論じている。連携化は、例えば倉敷市の美観保存条例(自主条例)や伝統的建造物群保存地区保存条例(委任条例)等、京都市の風致地区条例(委任条例)や自然風景保全条例(自主条例)等であり、一体化は札幌市の緑の保全と創出に関する条例(風致地区に関する委任条例と緑化推進に関する委任条例の統合)、京都市市街地景観整備条例(美観地区に関する委任条例と景観に関する自主条例の統合、ただし美観地区は2004年の景観法制定により廃止)などである。
本書は、地域特性に応じた都市づくりを進める上での条例の可能性を理解でき、大変参考になる。なお、本書が発行された2002年12月であるので、景観法制定、あるいは都市計画法や建築基準法の相次ぐ改正など、最近の情報を確認しながら読むことをおすすめする。 |