著者はPHP総合研究所の主任研究員であるが、まちづくりにはずぶの素人で、大学ではギリシャ哲学を学んだという。それが幸いしたのは、本書では中央集権型のまちづくりの終わりから、地方分権、広域まちづくりの必要性を解き明かし、市町村合併を含む広域まちづくりのシナリオをわかりやすく解説してくれている。全総計画の歴史を解説したものもいくつかあるが、簡潔に整理されており、「新しい全総」に至る流れも理解しやすいだろう。
本書では「地域主権」と「補完性」をキーワードとしてとりあげている。国から地方へ権限を分け与えるという「地方分権」よりも、より積極的な態度として「地域主権」を使っており、それを実現する上で補完性の原則(個人や近隣社会でできることは自治体が肩代わりすべきではなく、国や都道府県は市町村が自力ではできない事柄のみを補足的に援助する)が重要だという。この補完性の原則を別の言葉で言い直したものとして上杉鷹山の「自助・互助・公助」を紹介しており、それが本書の副題としても使われている。そのためのアプローチとして住民からはじまる広域まちづくりの重要性を強調している。最後に紹介している北海道オホーツク地域の26市町村による広域的なまちづくりの取り組みは興味深い。
本論とは直接の関係はないが、安室などを輩出した「沖縄アクターズスクール」を琉球王朝の歴史から語るなど、随所にあるコラムもおもしろい。一村一品の大山町の前町長の話しに由布院の中谷氏が反論するところも紹介してあったりして…。
他で語られていることも多いが、それを体系的にわかりやすく解説することは重要だ。コンサルタントとして学びたいところだ。
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