この本は建築史家の米山氏が、17の「名住宅」を17人のゲストとともに訪れ、批評・文章化した「住宅鑑賞ガイドの決定版」を目指してつくられたものである。その住宅に最も造詣の深いゲスト・最高のゲストと表現されているように、有名な建築史家や建築家が名を連ねている。
なお、この「名住宅」という言葉は一般的な言葉ではなく、本書で始めて使われる造語であるようだ。『建築単体で見ても造形的に素晴らしいが、それに加えて魅力ある「生活の物語」を内包した住宅、住宅だからこそ持ち得る美質に満ちた建築作品』という定義になるそうだ。専門的な見地から建築としていかに素晴らしいかということはもちろんであるが、それよりも建築主と建築家の友情物語や、建築家が建築主に向けたメッセージなどといった人間的なドラマが描かれていた点が非常に興味深かった。著者の友人である写真家志岐氏によってこの本のために撮り下ろされた写真も大きく、数多く使われていて、見ていて美しく感じた。著者とゲストから自然に出た率直な感想、素朴な意見から始まる会話のやりとりなども面白く、読んでいただきたい一冊である。 |