この本のタイトルである「自転車ツーキニスト」という言葉は、著者である疋田氏の造語で、「自転車通勤をする人」のことである。1999年に出版された「自転車通勤で行こう」の改訂版で、現状に合わなくなった部分や著者が勘違いをしていた部分が丁寧に訂正されていて、非常に好感が持てる。自転車通勤を始めた理由の紹介から始まり、ママチャリと放置自転車問題の関係、自転車をとりまく現代日本の経済、新婚旅行でのレンタサイクルなど話は多岐に渡り、非常に面白い。著者は、学生時代から保有している愛着ある自動車を手放し、便利さ追求から「撤退」することになる。そして、日本もこの不景気をチャンスとして捉え、自転車の使いやすいまち、自転車的な社会に変わるように少し「撤退」してみてはどうかと提案している。
私も「自転車ツーキニスト」である。名古屋市内の片道3kmを15分かけてタイヤの小さな折りたたみ自転車で通勤している。東京都内の片道12kmを45分かけてスポーツタイプで通勤している著者とは比べ物にならない。しかし、著者同様、自転車に乗ることで自然にまちの交通施策や地球環境の問題などに関心が向くようになったと思う。これは、自転車をパートナーとして日々生活する人誰もが感じることなのだという。「自転車ツーキニスト」や自転車を愛する人、自転車を漕ぐ楽しみを知る人が多くなれば、まちや世界がもっと良くなるのでは、そう思わせる一冊である。
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