この本は、近年、地域で居場所づくりやサードプレイスの必要性が言われる中で、住民等が主体となって取り組みが広がりつつあるコミュニティカフェのつくり方について書かれたものである。つくり方といっても経営論ではなく、人がつながる“場”のつくり方である。著者自身がこれまでに様々なタイプのカフェやサロンなどを試行錯誤しながら開催してきており、そこから得た豊富な経験や考え、また実際に自分で足を運んで体験したり、取材したコミュニティカフェオーナーの生の言葉を交えて、人と人がつながるために必要な仕組みや中身が何なのか、その要素を実践者の立場から熱く届けてくれる。
今はスタバを筆頭に「おしゃれカフェ」が至るところにあるが、そこでは静かに自分の世界に浸ることが多いと思う。しかし、コミュニティカフェは、著者の提示を借りると「成長する場」、「他者とつながる場」、「創発が起こる場」なのである。単に空間をつくったり、人を集めたりするだけではそういう場は実現されない。そこには場をつくるリテラシーが必要なのだという。
あるオーナーは、コミュニティを相手にするときは「接客」をしない。何が起こるのか
わからないのが現場。起こることをせき止めずに、伴走し、きちんとつなげていくのが役割だと言う。また、あるオーナーは何かが「無いこと」で、出来事や人間関係が動き始める余地が生まれる。創造的な欠如が場づくりには有効なのだ。また、大事なのは参加する人たちが自分の場を獲得するために主体的に動くことだという。また、そこにいる人たちがそこのあるだけの資源を活用してどうにかする場でこそ創発が生まれる、・・・。実に深い、場づくりについての思想、知恵、そしてノウハウが散りばめられている。カフェに関わる人にはもちろん、カフェに限らず、場づくりに関わる人にも助けを得られる部分が大いにあると思う。著者は今も場づくりに奔走中である。一度、訪れてみるのもいいかもしれない。 |