現在の位置:TOP>まちづくりを学ぼう>図書紹介>トヨタ「環境経営」ゼロエミッションへの挑戦 WWW を検索 スペーシアサイト を検索

 

トヨタ「環境経営」ゼロエミッションへの挑戦/千葉三樹男著

大成出版社/2001.2.3

 自動車産業は戦後日本の高度成長を支え、自動車は今や家庭に複数台所有するのも当たり前になるほど我々の生活にとけ込んでいる。その数は国内で約7,000万台、地球上ではなんと7憶4,000万台。ここまで来るのに100年かかったが、このままのペースが続けば2020年頃には地球上では10億台に到達すると考えられている。
 一方で環境問題がグローバル化し、自動車産業にとっても環境への対応は必要不可欠となっている。そのような中で97年に発表されたトヨタのハイブリッドカー「プリウス」の登場は、環境問題が一般化したと私自身は感じたが、これを本書では「トヨタが環境を経営に位置づけた宣言」と位置づけている。

 本書では自動車産業で世界第4位の年間売上高(7兆4,080億円(単独ベース)−99年度)を誇るトヨタの「環境経営」にスポットを当て、「自動車産業の発展と環境問題」という総論的な紹介、トヨタの4つの環境経営「環境マネジメント」「環境対応技術」「生産・販売と環境アセスメント」「廃車・リサイクルと環境アセスメント」の紹介、最後に「21世紀のトヨタ環境戦略」という構成になっている。92年の「トヨタ地球環境憲章」やトヨタの発展を支えた「トヨタ生産方式」など細かく紹介され、これらの取り組みの結果、1,011億円(年間売上高の1%強−99年度)の環境投資により170億円の経済効果を算定しているという。「環境に配慮しなくて企業は成り立たない」ことが常識になりつつある。

 私自身もトヨタユーザーであり、消費者としても「自動車と環境問題」は興味深いテーマであった。中でも電気自動車は実は100年前に蒸気、ガソリン車とほぼ同時に登場しており、内燃機関の優秀さでガソリン車に淘汰されたことによる「負け組」であったとは興味深い話である。「プリウス」は実は「古くて新しい技術」なのである。

(2001.5.9/浅野 健)