「彼ら東海が生んだ異才・奇人たちの生涯は、なまじっかな小説の類よりも奇抜で面白い、是非紹介したい」という編著者の小松氏の言葉通り、紹介されている約50名の生涯はどれも興味深く、とても楽しく読むことができた。年代順に並べ替えると、江戸時代の本寿院、徳川宗春に始まり、明治大正の御木本幸吉、福沢桃介、川上貞奴、昭和の小津安二郎、新美南吉と続き、最後が秘宝館の生みの親である松野正人となる。また、自称天皇の熊沢天皇、コンクリート仏師の浅野祥雲、世界一周無銭旅行の中村直吉、探偵小説家の小酒井不木などの発想力・行動力にあふれた生い立ちは特に興味深かった。
時に異端となり、マイナーで滑稽に陥ることもあろうが、彼らの何ものにもとらわれない若々しい創造のエネルギーが「芸どころ」「ものづくり文化」の風土を生み出し、現代の日本文化の基盤を支えているという小松氏の考えに共感できた。紹介された人物は、編集の都合で物故者のみに限定され、紙幅の都合で見送った候補者もおり、また今後もこの地域からは異才・奇人が誕生することが予想されている。将来、本著の続編発行を期待するともに、異才・奇人のように自分の信じる道を愚直に切り拓いていきたいと思わせる一冊であった。
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