戦後、一貫して住宅問題、都市問題に取り組むとともに、優秀な弟子を育てあげた偉大な学者であり、運動家である著者が新建築家技術家集団の機関誌「建築とまちづくり」に掲載した論文や新建学校等の講演をもとにとりまとめられたもの。
著者は生前にも膨大な著作をとりまとめているが、その死後も偉大な功績を世に残そうという弟子の手によっていくつかの著作がとりまとめられている。あまりに多すぎて読み切れないので、この本も興味を持ったところだけ読もうとしたのだが、講演がもとになっているだけにわかりやすく、20年も前に述べられているでも古くささはなく、結局全部読み切った。
建築運動について述べられているところも示唆に富んでいるが、「すまいと住宅問題」「まちづくりの課題」のところは改めて教えられるところが多い。昔から西山先生の著作は読んでいたが、仕事を通じて様々な経験をした今だからよくわかるという部分もある。新全総について述べられている部分もその後の全総計画の推移をみているだけに、その指摘のするどさに感服する。年老いても京都や奈良のまちづくりへの警鐘をし続けた著者のタレント建築家黒川紀章氏に対する批判もするどい。建築ジャーナリズムのとりあげるきらびやかな建築に惑わされてしまわない目を養うことの重要性を改めて教えられる思いである。
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