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都市の再生 地域の復活/伊藤 滋著

ぎょうせい/2004.1.25

 都市計画の分野に携り、早十数年が経過しようとしている。その間、景気後退といった社会環境の変化などから、都市計画の環境も大きく変わってきた。本書は、その中でも変化の大きい地域における都市計画のあり方についてまとめられている。
 近年話題となっている「都市再生」の動きは、阪神大震災がきっかけとなり、国や地方行政、さらには市民も参加しまちづくりの議論が重ねられ実践されてきた。しかし著者は、行政、都市計画コンサルタントや建築家などの専門家とそこで暮らす市民のそれぞれに問題点があると指摘している。都市計画において全員合意を原則とする行政やどんな街づくりにも反対する市民、さらには、まちづくりへの関心がない専門家などなど。都市計画に長年携ってきた経験からくる率直な思いを語り、それぞれの立場での意識改革の必要性などを訴えている。
 そして、今後の地域復活の策として、特に再開発の現場をみてきた経験から「軽くて小さな再開発」の推進を説いている。建物は、長屋形式の3階建てで権利者の住まいや店舗とともに、これからの地域社会の中心となる高齢者のためのケアハウスを盛り込ませるというもの。これは、高容積化を大原則に進めてきたこれまでの再開発から「身の丈にあった再開発」へと転換する時期にきていることを再確認させられる。
 この他、大西隆氏(東京大学先端科学技術研究センター教授)と都市再生に纏わるユニークな対談も掲載されている。この地域の話題にも触れられており大変興味深い。

(2004.6.10/村井亮治)