景観法が成立するなど、最近日本でも「景観」がブームだ。これまでは「景観」とか「風景」というと、「イコール自然景観」「人間の手の入っていないもの」という認識が一般的であった。そのため美しい海の風景のすぐ側に不調和な店舗が当然のように立地したりしていたが、ようやく、人工景観も自然景観も一体的に「景観」「風景」をつくっていくのだと認識される時代になったのであれば、非常に喜ばしいことだ。
「美しい町並み」というと、窓辺に花の飾られたドイツの住宅街やヴェネツィアの運河沿いのパステルカラーの町並みなどを思い出す人も多いと思うが、この本を読むと、そういった美しい欧米の町並みが、実にきめ細かい規制、コントロールのもとに成立しているということがわかる。美しい風景を守っていくためには、きちんと基礎調査をして、しっかりと規制をかけていくことが必要であり、そのためには裏づけとなる十分な予算、スタッフが必要だということもわかる。ここでは欧米7ヶ国(英、仏、伊、墺、独、米、加)の町並みがどのような手法、プロセスによって計画されているのかということが、少々難解な文章ではあるが、きめ細かい調査のもとに記されている。
これから日本で風景づくりを考えていくにあたって、非常に学ぶところの多い本だと思う。 |