近年、元気のある都市として各方面で名古屋の話題が取り上げられている。国際空港開港や国際博覧会開催、名古屋ブランドの東京進出、さらに、名古屋駅周辺地区では、国の都市再生特別地区の指定を受け、超高層ビルを建設する再開発が進められるなど、話題が尽きない。
本書は、そうした「都市再生」によるまちづくりが様々な問題を引き起こし、まちがこわされていることを指摘している。その理由として、今日の都市再生は景気低迷のテコ入れを前提とした経済対策が背景にあり、それが真の都市再生に少なからずゆがみを作り出してしまった点をあげている。具体的には、建物の高層化による景観圧迫と日照問題、エネルギー消費量の増大、住居費の高騰、地域コミュニティの崩壊など、様々な点をあげている。東京を中心に具体的な再開発物件へのヒアリング等をもとに、現場のリアルな問題点とそれに至る経緯が紹介されている。
本書で取り上げられた事例は主に大規模再開発であり、事業による影響も当然大きくみえてしまうが、これらの問題は、事業の大小に関わらず、全国の都市再生や再開発の現場でも同じように抱えていることだろう。そうした中でもそれぞれの現場では、魅力ある都市の形成と事業の採算成立に向け試行錯誤を繰り返している。再開発に携る者としてまちをこわさない真の都市再生、都市再開発とは何かについて、考えさせられる1冊であった。 |