本書を手にした際に、「名古屋にもこんな不動産サイトがあったら面白い!」と最初に感じた。「東京R不動産2」は、2006年に出版された「東京R不動産」で住居やオフィスを借りた方や買われた方が、どのように使っているかを取材した記録本になっている。東京R不動産は、新しい視点で不動産を発見し、紹介していくサイトであり、一般的な不動産サイトでは、見つけることが出来ない不動産を発見できるサイトである。
一般的に不動産を探す際には、築10年以内、駅からの徒歩10分以内、設備の充実などの条件を、軸にして探すことが多いと思うが、東京R不動産では、どのように住むか、働くかを軸として、スタッフが感じた空間のイメージを、スタッフの視点でこんな使い方ができるのではないという説明があり、見ている方にもイメージが伝わりやすい不動産情報が紹介されている。
本書の中の一つである「リノベーション天国」というタイトルで紹介されている物件があり、改装OKのアパートである。この物件は、築45年で全戸85戸のアパートであり、現在では常に満室状態である。前回の、「東京R不動産」で紹介し、入居者が増加したとのこと。改装OKと聞くと、退室する際には現状復帰が求められるイメージであるが、この物件は、改装したまま退室することが可能である。次の入居者がその物件を気にいれば入居することができ、その後、どのような内装にしたいか相談し、自分の住み方にあった部屋へと変化させていくのである(現状復帰も入居者が望めば可能な範囲で行ってくれる)。
本書の中でも、実施に改装された部屋が紹介されており、居住者がそれぞれの住み方に合わせて部屋をデザインしている。このような形態をとることで、単なる不動産価値だけではなく新しい価値が生まれ、本来もつ物件のポテンシャルが生み出されている。また、大家と居住者の関係も、居住者の改築の相談などに乗ることで、顔が見える関係を築いている点も、一般的なアパートとの違いである。
また、アパートだけではなく、2拠点居住をしている物件も紹介されている。2拠点居住は、仕事がある平日は都心に住み、仕事がない週末は自分の趣味やライフスタイルにあった郊外に住むというスタイルである。週末だけの生活に合わせた間取りにすることで、普段の生活より贅沢な空間の使い方ができることも魅力である。
東京R不動産では、不動産という枠を超えて、様々なライフスタイルにあった物件を独自の視点で紹介し、地域に眠っている物件に新たな息を吹き込むきっかけをつくっている。今では、東京だけではなく、金沢、福岡、房総、稲村ヶ崎、山形など地方にもR不動産が展開しており、今後のさらなる展開が気になる。名古屋でも、同じようなに使われなくなった物件を活用して、栄にあった「さくらアパートメント」、「覚王山アパート」などのような取組みが挙げられる。最近では、まちなかを歩いていると古民家を活用した店舗は、比較的多く見られるようになっている。古民家だけでなく、名古屋にも、ポテンシャルをもった物件が数多く眠っているはずであり、その物件を見出す担い手がいないだけなのかもしれない。これからはまちを歩く際には、独自の視点でおもしろい物件を見つけてみようと思う。
東京R不動産 http://www.realtokyoestate.co.jp/
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