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ニッポン地下観光ガイド/小島健一・栗原亨・小林哲朗・津村匠 著

株式会社アスペクト/2008年2月6日発行

 ブログ「見学に行ってきた。」、写真集「廃墟探訪」や「工場萌え」などによって、廃墟、工場、ダムや団地といった、人々が今まであまり意識しなかった風景や施設が注目を集めている。それらの写真は非常にダイナミックであり、独特な美しい色彩などが印象的で、注目を浴びるようになったのも理解できる。
地下施設(空間)や廃墟に造詣が深い4人の著者が、一般人の見学できる地下施設をガイドブックの形にまとめることはできないかと思ったことが、この「ニッポン地下観光ガイド」が生まれたきっかけだそうだ。日本全国25箇所の地下施設が写真と解説文はもちろん、「無料駐車場完備。近くに民間の駐車場がある。間違えないように注意」といった親切な行き方付で紹介されている。上下水道や電気などの「ライフライン」、植物栽培や最先端化学の場である「実験施設・研究所」という現代特有の地下の大空間だけでなく、坑道跡などの「産業遺産」、「洞窟&鍾乳洞」、軍需基地跡などの「戦争遺産」という文化や歴史を感じさせるものも含めて、5つのカテゴリーに分類されている。

  「ライフライン」に分類されるものは巨大という言葉でも足りないのではというほど大規模な地下施設もあり、大神殿と呼ばれる「首都圏外郭放水路」、改札とホームの標高差が70m・486もの階段という「JR上越線土合駅」などは、ぜひ訪れてみたいと感じさせる魅力がある。また、利用されなくなった地下空間がアートスペースとして再利用されているのは予想できたが、栽培や貯蔵といった農業の分野、低酸素トレーニング室として活躍している地下空間もあって驚かされた。著者が薦めるように、自分の足で訪ね、五感をフルに使って異世界を感じとりたいと思わせる一冊である。
(2006.5.26/山崎 崇)