本書は、「舟運」というタイトルになってはいるが、内容的には河川、運河を中心とした水辺の利用・活用全般を扱っている。まさに、国内各地で水辺を活かした都市再生が進められている昨今の取り組みに役立つ本である。
まず、世界各地の運河や河川など内陸水路を利用した舟運の事例や都市再生の事例が多数紹介されている。ヨーロッパ、アメリカ、カナダ、アジア各国の運河利用、まちづくりが写真を多数交えて紹介されているため、イメージが湧きやすい。特にヨーロッパの歴史的な建物を背景にした水面や森の中を進むボートの絵などは、景観的な美しさも伝わり、つい運河の旅に出かけたくなってしまう。(ただ、写真がモノクロというのが惜しい・・・)
また、舟運の歴史的経緯も紹介されており、かつての人と水辺の関わり、都市と水辺の関わりの中から、その魅力を知ることもできる。
そして最後に、これからの舟運、水辺利用の提言をまとめている。
本書を読んで、水と人・都市は切っても切れない関係にあるということがよくわかった。個人的には、都市に水辺は必須だと思っている。それは景観的にも、自然生態系的にも、人間の精神構造的にも。名古屋も堀川、中川運河という都市内水路を有しているが、悲しいかな、まだまだ都市の裏側という印象である。本書に、水辺利用にはある程度までの水質改善が必要条件であるとある。堀川、中川運河はまずその必要条件を手にすることから始めなければならないのだろう。そうすれば、次のステップとして、この本書に紹介されているような利用の道筋が見えてくるのだろう。
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