狭い国土のもとでやむなく高密度に集まり住みあわざるをえないからではなく、むしろ集まり住みあうことこそ、これからの社会の基調に照らしてみると積極的意味があるとし、「これからは集合住宅づくりの時代である」という。
著者が係わった事例を中心に<共に生きる>集合住宅づくり、住民参加の集合住宅づくりの事例12を取り上げている。著者自身が住む熊本版コーポラティブ住宅・Mポートについては、16戸の住戸について住み手の思い入れが語られ興味深い。コーポラディブ住宅についてはコスト面が重視されてきたこれまでの流れからの転換期にあると考えられるが、この熊本での試みはこれからのコーポラティブ住宅のあり方を示している。ただし、熊本のような地方都市でこのようなプロジェクトが成立したのも、著者のようなコーディネーターがいたからこそともいえる。
12の事例はどれも興味深いが、門真市の「カルチェ・ダムール」については、塩崎賢明・竹山清明編著の「賃貸住宅政策論」において「そして誰もいなくなった」共同建替の事例としてあげられていただけに、本書での取り上げ方にやや疑問を感じた。著者はこのような評価を知った上でとりあげていたのだろうか。 |