「福井県小浜市」と聞いて、2007年のアメリカ大統領選でまちをあげてバラク・オバマ氏を応援する姿がメディアに取り上げられていた、あのフィーバーぶりを思い出される方も多いかもしれない。本書は、その小浜市でオバマフィーバーが起こったずっと以前の2000年から取り組まれている食を基軸にした総合的な地域振興策「食のまちづくり」について、行政主導の取組や市民の自主的な活動を中心に解説されている。
地産地消や定期市、食育、グリーンツーリズム、郷土料理の伝承など、食や農によるまちづくりは多くの地方自治体でも取り組まれているが、小浜市では「食のまちづくり条例」の制定(2001年)や「食のまちづくり課」の新設(2002年)、食のまちづくり拠点として食文化館を整備(2003年オープン)するなど、行政の強力な推進体制のもとに進められてきた経緯がある。一方で、地元住民が自宅のガレージで朝市を始めたり、農家のお母さんグループが「お弁当屋さん」や「かき餅屋さん」を起業するなど、食に関する市民の自主的な活動もみられる。
小浜市では特に「食育」に力を入れており、その対象は就学前児童から団塊世代のお父さんまでと幅広く、特に市内の年長児は全員が参加できるように配慮されている。小学校では地元のお母さんが講師を務めていたり、地元住民が食材を提供していたりと、地元住民も上手く関わっており、「食育」に触れて初めて地元の食材の素晴らしさに気付く方も多いという。
小浜市の場合、食に対する意識の向上や地域食材の良さへの気付きなどが市民の自主的な行動に繋がっているように感じられ、本書を読む限りでは、市の施策が上手く市民へ波及していった成果と感じられる。幼いころから食育に触れている子どもたちが大人に成長したころには、「食のまちづくり」がさらなる広がりをみせているかもしれない。 |