名古屋の地下街の話題を中心にまとめられた一冊。著者は、平成24年から名古屋大学減災連携研究センターに准教授として着任された廣井悠氏。名古屋在住を機に名古屋らしい研究テーマとして地下街に着目され、本書の発行にいたった。
地下街は、全国に80ヶ所あるとされ、愛知県は東京都に次いで2番目に多く、その
ほとんどは名古屋市内だが、市外で唯一あるのが蒲郡駅地下街で、その距離は僅か22mと極端に短く珍しい地下街として紹介されている。
名古屋市内の地下街には日本初の本格的な地下街と言われている地下街がある。名古屋駅周辺で整備されているサンロードで、1957(S32)年に開業している。ただ、著書の中で名駅地下街(メイチカ)や栄地下街(森の地下街)も同年開業としてあり、どれも開業60年周年を迎えた。地下街の街「名古屋」の所以である。
各地の地下街の概要とともに、地下街における自然災害などリスクに対する安全性がどう保たれるのかについて紹介されている。自然災害で第一に思うのが地震だが、近年の震災に遭った地下街では崩壊など大きな被害は出ていないという。地中とともに揺れるため地下街は地震に強く安全な空間にもみえるが、耐震補強等が実施されてきている。
地震以外の災害リスクとして、火災と浸水がある。視界を遮り立ち込める煙と足元を取られかねない浸水、どちらの場面でも、利用者を安全に地上へ避難させるため、その避難経路確保にむけ、管理会社では様々な工夫を凝らし技術を導入してきている。特に近年は、爆弾低気圧にみられる異常気象、大雨災害が頻繁に発生し、地下街への浸水リスクも高まりつつあり、浸水を防止、または遅延させる工夫など、実例写真などで紹介されている。
その一方で、地下街が担う機能の一つに災害時の一時避難機能(帰宅困難者受け入れ)も有しているとしている。利用者には、偶然居合わせた地下街で一時避難する場合でも、避難所ではないため物資配布や要看護者への対応など、共助の意識が必要と記している。
名古屋の代名詞であり身近な空間である「地下街」。その歴史や安全で快適な空間整備の取組みを知るとともに、いざという時の心得についても役立つ一冊であった。
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