ここ最近、日本経済は景気が上向いたと言われつつも、将来への不安は拭い切れていない。少子化や高齢化の打開策は見えず、国と地方の借金は膨らみ続け、社会保障制度も不安ばかりだ。これまでの経済を支えてきた、お金第一の「マネー資本主義」は限界にきている。
本書では、マネー資本主義を補完する、万が一のときにはバックアップするシステムとして、グローバルとはなくローカルに目を向けた「里山資本主義」の有効性を提唱している。それはお金に依存せずとも水と食料と燃料を手にし続けられるしくみであり、グローバル経済に左右されない地域循環型の経済のしくみである。また人としての本来の姿を取り戻すしくみでもある。それらが今後の世界経済の先端であり、マネー資本主義から取り残された山里からそれはすでにはじまっている、という。
輸入に頼る電力から地域の森林資源=バイオマスエネルギーを活用したエネルギーの地産地消や、地元で採れたが市場に出せない半端野菜を地元の福祉施設の食材として有効活用して地域循環を生むしくみ、またそこでしか手に入らない地の物や食材を商品化して地域に利益を還元するしくみなど数々の事例を交えて、里山資本主義の経済的側面のメリットを解説してくれる。同時に、人の存在すらも金銭換算されてしまうマネー資本主義に対して、自然の恵みや地域の人とつながることで生きがいややりがい、人との絆など金銭換算できない真の幸福感や安心感という良さも生み出すと、現地の人たちの声を引用しながら伝えてくれる。
マネー資本主義の中では見落とされてきたものに光を当て、地域とのつながりの中でそれらを活用することで、明るい未来につながっていく。ローカルを大切にするという基本を再度思い起こさせてくれる一冊である。
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