この夏に読む本を地元書店で探していた時にふと目にとまった本で、初版は30年以上前のものである。著者は名古屋市出身の経済・歴史小説家の城山三郎。
終戦後の混乱期の中、5人ではじめた小さな旅行会社「日本ツーリスト」が、学校の修学旅行に注目し知恵や工夫で自転車創業的ながら営業規模を拡大していき、最後は
近鉄系の観光部門と合併して今の近畿日本ツーリストが誕生する。主人公は近畿日本ツーリストの副社長を務めた馬場勇。本のタイトルは、小説の最初の方に出てくる臨時列車の名前で、面接に来たばかりの若者をその場で採用し「臨3311に乗れ」と修学旅行の
添乗をさせてしまう。全国に営業所を出すにも名もない旅行会社が信用を得るには場所、しかも住所が大事と、国鉄駅舎の狭いスペース、駅前の安い木賃アパートなどを借り、営業所の責任者には給料は自分達で確保しろ、という始末。やることは滅茶苦茶だが、馬場の情熱とひたむきさに京都や熱海の老舗旅館、近鉄をはじめとする多くの人脈を得、日本有数の旅行会社の幹部となった。
戦後の混乱期から高度成長期へと移る時代背景の中、会社が、観光業がどのように発展していくかをみることができるおすすめの一冊である。 |