「サステイナブルで小さくあることを選んだ街」ポートランド。全米を飛び回って様々な街を見てきた経験がある著者がポートランドを訪れた際、一目見て街の魅力に感化され移住することを決めたというが、本書を読むと街の魅力がよく伝わり移住まで決意する気持ちも理解できる気がする。
本書はまず、ポートランドの街の特徴やその魅力について解説がある。具体的な特徴としては、他の同規模の都市と比べ都会的なダウンタウンがあり、交通インフラが良く整い、歩いていて楽しい街路が沢山あるなど様々だが、これらを体現する上で深く関わっているまちづくりの考え方として「徒歩20分圏コミュニティ」というものが紹介されている。仕事や買い物など様々なアクティビティが徒歩20分圏内で完結するようにまちづくりをデザインすることだが、結果的に車での移動は不要になり、環境保全にもつながる。また忘れてはいけないのは、このまちづくりの考え方を生み出す礎となる市民の気質である。様々な個性を受け入れ、アートや音楽を愛し、環境に優しいサステイナブル(持続可能)な生活を重要視し、リベラルな気質が強い住民が多く住んでいるというのである。
その後は「スタンプタウン」と呼ばれ荒廃していた街から40年という長い年月をかけて生まれ変わってきた歴史や、今まで培ってきたまちづくりの考え方を他国へ輸出する取組みまで様々な内容に触れられているが、中でもポートランド市開発局による都市再生への取組みついては、著者が同局のビジネス産業開発マネージャーとして業務に従事している立場で書いていることもあり、ポートランド市開発局についてや、その取組みについてとても分かりやすく解説されていると思う。
本書にはポートランドの今を切り取った魅力的な写真も多数掲載されている。全米で住みたい街第一位の座を10年間キープしてきたというポートランドの街を深く知ることができる1冊としてぜひお勧めしたい。
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