小樽運河では、昭和40年代後半に起きた運河を埋め立てて臨港道路を通すという行政の計画に対し市民が反対し、約20年もの長期にわたって「運河論争」が繰り広げられた。このことについては、多くの文献で見ることができるが、今回紹介する著書のタイトルは「運河戦争」という言葉が使われている。当時は現在と比べて市民参加の制度的なしくみがほとんど整備されておらず、開発と保全をめぐって繰り広げられたのは正に「戦争」だったのだろう。また、運河の保存に向けて、旧銀行や港湾の倉庫などの近代建築を地域の資源や文化遺産として位置づけようとしたり、広く運河の価値を知らしめるために運河を舞台に音楽、すもう、親子運動会、紙芝居、もちつき大会、清掃活動などの様々なイベントを展開したりするなど、現在でも通用するような様々な取組みを行ってきた。
本書は、市民の立場からまちの景観を守るために展開してきたプロセスももちろんだが、運河の保存に対する想いを言葉にする書きぶりについても大変参考になる。このような先人たちの努力に学び、地域固有の風景・景観を次代に伝えていけるように日々取り組むべきだと、襟を正す気持ちにさせられた。
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