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 「御嶽山 静かなる活火山」/木股文昭 著
 信濃毎日新聞社/2010年6月25日初版、2014年11月1日第2版

 昨年2014年9月27日に御嶽山が噴火し、50名を超える登山者が亡くなった。また、
今年に入ってからも、口永良部島や箱根山、浅間山など、噴火や火山活動の活発化の報道が続き、日本が火山国であることを改めて思い知らされる中、手に取ったのが本著である。
 本著は、名古屋大学大学院環境学研究科附属地震火山・防災研究センターの元教授であり、御嶽山を長年にわたり研究されている木股氏が、2010年に執筆したのが初版となる。昨年9月の御嶽山噴火を受けて緊急増刷された際に、巻頭に著者の言葉や昨年の噴火写真が追加されている。
 本著を読むと、御嶽山を中心としながら火山をとりまく研究や観測が進歩してきた経緯がよくわかる。1979年に御嶽山が有史初の噴火をした際には気象庁や火山研究者の多くは噴火自体を想定していなかったことや、火砕流や小規模な噴火の発生過程を説明できるようになったのは最近になってからであることなど、いくつも驚きがあった。
 2010年時点で既に観測体制について懸念されていたことには、特に驚かされた。御嶽山の活動監視のために気象庁が設置した地震観測点は1点しかなく、地震の震源を求めるのに最低限必要な3点の観測点を満たしていない。御嶽山に限ったことではなく、過去の活発な噴火記録を持ち、最近も活発な火山に関しては気象庁の観測網は充実しているが、頻発でない多くの火山は、最低限の観測体制になってしまっている。御嶽山では、県や大学による観測網が補い、気象庁にリアルタイムにデータを届けているが、県や大学は予算が絞られ、観測点の維持が厳しくなってきているそうだ。また、研究人材も育っておらず、噴火警戒レベルをより確かなものにするためにも、ハード面の体制確立とともにソフト面、人材面の充実も確実に重要である。
 梅雨明け後、捜索や調査が進められると思うが、噴火後に著者が追記した「次の事態に備えるのが、今回の噴火で犠牲になられた方への、せめてもの鎮魂」、「今こそ、被災した現地で生活する人々を考えた、現場に役立つ観測と防災体制が強く求められています」という想いが今後の実践に繋がることを願いたい。


(2015.6.22/山崎 崇)