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ニュータウン再生 住環境マネジメントの課題と展望/山本茂 著

学芸出版会/2009.5発行

 日本最初のニュータウン「千里」の45年の歴史の中から、様々な主体による住環境マネジメントや再生に向けた取組みの軌跡を探り、今後の展望が語られている。
  筆者はコンサルタントとして千里ニュータウンに関する調査・計画・研究に関わる中で、市民活動に参加、仲間とともに「千里・住まいの学校」を立ち上げたという経歴を持つ。コンサルタント退職後、研究に専念し、取りまとめられた博士論文をもとにできたという本書は、関西の文化遺産であり、世界遺産にしようという声も一部に聞かれるという千里ニュータウンの姿を詳細に伝えてくれる。千里ニュータウンとの長いつきあいとまちに対する愛着があればこその著作だろう。
  ニュータウン再生が課題としてとりあげられるようになってすでに10年以上が経過しているが、ここに来て注目が集まってきているように思う。都市計画285の地図の風景では「石原正氏の千里ニュータウン絵図」がとりあげられ、中部建築ジャーナル2010.3には片寄俊秀氏による「実験都市 千里ニュータウンに学び生かせ」が掲載されている。いずれも千里ニュータウンの歴史的価値に注目している。また、C&D154ではそのものズバリの「大規模郊外団地の行く末」という特集が組まれている。人口減少社会に直面し、改めてニュータウンという良好な都市基盤とそこにある住まいが見直されてきたということだろう。
 千里ニュータウンについては、先日、住み替え支援に取り組む「千里すまいを助けたい!」のヒアリング調査で初めて訪問しまちを歩いてみた。その立地条件のよさと集合住宅団地の建替えがどんどん進む姿に、中部のニュータウンとの違いを感じたが、豊かな環境と45年の歴史が生んだ文化財としての価値も感じることができた。
 オールドタウンと揶揄されがちなニュータウンがニュータウンとして輝き続けるにはどうすればよいか。千里での取組みに学び考えてみたい。

 

 (2010.3.1/石田 富男)