著者の大賀氏は、ケニアのナイロビに本部を置く国連環境計画(UNEP)という国連機関で働き、ナイロビに在住している。日本人の多くが、節電・節水、省エネ、リサイクルといった「地球にやさしい」生活をすることで自然を守ることを環境問題と捉えているのに対し、国際会議ではどのように経済開発を進めて、貧困をなくしていくのかという視点で環境問題が話し合われているそうだ。どちらも環境問題で根は一緒だというのが著者の考えであり、本著に書かれているケニアの事例や国連での40年以上の取組みを知ると自然と理解できるように思う。
日記のようなケニア人青年の生活の紹介や、職務外で治安の良くないケニア北部地区を周った旅行記などを読むと、開発と貧困の問題を改めて考えさせられた。また、国際会議の場での政府間交渉の進め方をよく知る著者の体験談や、各国政府を「主人」・国連を「道具」・事務局職員を「ウラカタ」と表現することの実例もわかりやすく非常に興味深く感じた。
以前から「地球にやさしい」という表現に奢りのようなものを感じて違和感を覚えており、副題も本著を手にとった理由の一つであった。あとがきから推測すると著者ではなく、出版社側でタイトル付けがされたようであり、当初の期待とは異なったものの、環境と開発の問題への新たな興味を持つきっかけになればという著者の想いが十分に伝わる良書であった。
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