「ばか者(瞬発力)、わか者(柔軟性)、よそ者(多様性)によるオンリーワンの地域づくり」本書の帯見出しの一文である。この「○○者」は、近年様々なものが都市部へ集中したことで地方都市(地域)の衰退が進んできたが、そうした中でも地域へにぎわいをもたらせ、ビジネスの成果を収めた人物のことを表現している。
本書では、「にぎわい」と「地域ビジネス」を創りだす際に重要となる「人」のかかわり方を筆者の視点で捉え整理している。にぎわいの創出で大切なのは、価値観を認識する「気づき」を持ち合わせ、固定概念に捉われることなくその地域のもつ特性や問題点を把握し、にぎわい創出への戦略へと導くこと。また地域ビジネスにおいては、にぎわいを地域住民が潤うだけのビジネスへ結び付けられるかどうかが大切で、主体となる住民と事業の方向性を見極める事業体、それを支えるために黒子に徹する自治体の存在をあげている。そして、その考えが実践され成果を収めてきた7つの地域をとりあげ、地域特性や過去の地域づくりの失敗談、自らの苦悩や地域のにぎわい創出への想いなどを立役者となった人物自らに語ってもらっている。
本書で取り上げられている事例の中で、偶然にも過去、仕事を通じてお会いできた常滑(やきもの散歩道)の山本氏、長浜(黒壁)の笹原氏の名前があり、ここでの内容やお会いした時の様子から「○○者」という言葉に妙に納得してしまった。携わってきた人自らが執筆しているため、よりリアルにその人の今なお抱いている熱意が感じられる。これまで常滑と長浜へは何度か訪問しその人気の様子はみてきたが、本書を読んで再び足を運びたくなった。
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