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年金で豊かに暮らせる日本の町ガイド/わいふ編集部 編

学陽書房/2003.4発行

 人口減少を間近に控え、各自治体は住民獲得のため、魅力向上を求められている。それは「子育てしやすいまち」であったり「大学との連携が進んだまち」であったり、ものさしは様々である。
 本書は、「年金で豊かに暮らせるか」というものさしで全国の自治体を測っている。本書が生まれたきっかけは、女性会員5000名の投稿誌「わいふ」を発行してきた女性グループによる全国の老人ホームの調査だった。地方のホームは、入居金や月々の納入金が都市部に比べ、相当安いことに気づき、同時に総合的な「安心」を得ようとすると、田舎より地方、地方よりある程度都会の方が有利であるとの結論に至ったという。
 具体的な条件は「便利な交通機関が通っていること」「安くて豊富な食料品が手に入ること」「温暖な気候であること」「移住者がとけ込みやすいこと」「いざというとき、子どもや親戚が駆けつけられる手段があること」「老人ホームが近くにあること」「医療機関が複数あること」で、その結果セレクトされた42の自治体は人口5万人以上、平均家賃が東京の50%以下の地方都市となっている。
 ちなみに名古屋近郊では愛知県一宮市が選ばれており、名古屋に12分、岐阜に10分の便利な大都会近くの田舎町で神社の参道にもなっている商店街が大きな魅力であるとされている。
 来る年金生活に向けて、読者が42の自治体を下見に行くことも考慮して自然景勝地や観光名所も紹介され、さながらガイドブックのようだが、巻末に「自由契約の福祉老人ホーム利用法」「知っておきたい介護保険の利用方法」というレポートがある。実際に自由契約の福祉老人ホームに入居するとなったらどれくらいの広さの部屋にいくらで入居し、生活費はいくらになるのかなど、極具体的にモデルケースが紹介され、またその延長上に介護保険を利用するとなったらどのようなことに留意すべきかをまとめている。様々な警告を発しているが、そこに悲壮感は全くなく、「正しい知識と知恵で長い老後を楽しく過ごそうよ」という前向きなメッセージが伝わってくる。
 まだまだ現役の人、引退した人、そして引退後のシミュレーションをしてみようかと思っている人などライフスタイルの各段階で読むことを勧めたい。

(2004.9.17/竹内 郁)