景観法制定以降さまざまな視点から「景観」が重要視され、魅力的な景観を保全・再生しようと地域独自の景観づくりを進めている自治体も多い。日本の国土の約7割が森林であることを考えると、まちの景観を少し広域的に捉えたときに、森林が視野に入ってくることは多い。本書は、これまで景観の背景にすぎなかった森林を森林景観という視点で捉え、より魅力的な森林景観をつくるための考え方や手法、事例がまとめられている。
構成は、@森林景観を理解するための「序」、Aスケールや地域特性に応じた計画の考え方を紹介した「解説T・U」、B近年脚光を浴びている「事例」の紹介、となっている。
本書で解説されている森林景観づくりの方向性は、「スケール」と「地域特性」の二つの視点から捉えられている。まず、計画の対象とする範囲の地理的な広がりを表す「スケール」。これは、地域森林計画区、レクリエーションエリア単位、林分単位などであり、単位によって計画のポイントや手法も異なるとされている。また、「地域特性」というのは、森林の場所が都市なのか里山なのか、あるいは原生地域を含む山間域なのか観光・リゾート域なのかといった特性である。本書は、この二つの視点を組み合わせてできる様々なケースに応じた評価手法や計画手法が事例に沿って解説されており、森林景観を検討する際に非常に参考になるのではないかと思う。
最後に、筆者が本書の中で「森林景観の成り立ちには、その土地固有の自然的、文化的な条件が強く働いており、ある場所で通用したやり方が別の場所でそのまま使えるとは限らない」ということを訴えているように、私自身も森林景観を考える際は、森林とその地域の特性や地域の人々との関わりを反映した計画となるように努めたいと思う。
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