「前田建設ファンタジー営業部」では、アニメやマンガ、ゲームといった空想世界の建造物を現在の技術でつくったとしたら工事費はいくらかかるのか、工事期間はどれだけかかるのかという検討を行っている。架空の部署ではあるが、実在する建設会社の技術者たちが実際に検討し、その内容を連載形式で自社のウェブサイトで公開している。これまでに計5つのプロジェクトを受注しているファンタジー営業部の初仕事である「マジンガーZ格納庫兼プール構築工事」を書籍化したものが本著である。
プールの底が2つに割れ、滝の中からマジンガーZがせり上がってくる出撃の名場面を再現するために、どのような工法で地下を掘るのか、格納庫屋根(水槽の底)をどのように開閉するのか、マジンガーZをどうやってジャッキアップさせるかなど、建設会社の技術者が岩質地盤やトンネルなどの社内のエキスパートのアドバイスも受けつつ工事費や工期も含めて現実の大規模プロジェクトさながら、真面目に検討しているのが非常に面白い。社内にとどまらず、社外の大型機械メーカーにも相談を持ちかけて、より正確な検討をしようと試みる姿勢には感心した。
ゼネコンと呼ばれる建設会社が具体的にどのような仕事をし、どんな知恵を絞ってお金を得ているのかを一般の人にも知ってもらいたいということから始まったということだけあって、専門用語も分かりやすく補足説明されているので、ぜひ一読いただきたい。マジンガーZになじみのない世代には、「銀河鉄道999の高架橋」を取り上げた書籍「前田建設ファンタジー営業部NEO」や、「GRAN TURISMO4のグランバレースピードウェイ」や「機動戦士ガンダムの地球連邦軍基地ジャブロー」プロジェクトを公開しているウェブサイトをご覧いただきたい。
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