黄色と黒の虎柄模様にデザインされた表紙は、タイトルの「デッドライン」と同じく非常に目を惹き、かつ危機感をあおられる。内容も表紙同様に過激かと思ったが、読み進めると、そうではない。非常に丁寧でかつ理路整然とした論理展開をもとに、衰退しつつある地方都市でまちの再生に取り組むための考え方やガイドラインを示した内容になっている。
戦後の復興とその後の経済成長に合わせてまちの経済は拡大路線をたどり、モノをつくれば簡単に売れる時代が続いてきた。しかし、人口減少・内需縮小のフェーズに経済が一転して切り替わり、同時に従来の川上から川下へというバリューネットワーク(不動産オーナー⇒商店テナント⇒消費者)の流れも逆転した。それについていけず全国各地のまち(中心市街地)が衰退している。今は消費者が選ぶ時代になり、これまでとは逆転の発想で、商店や不動産も経営する必要がある。ひいてはそれらの集積で構成されるまちの経営も同じことがいえる。これがまち再生の大きな考え方として本書では貫かれている。そのための既存ストックの活用や商店経営のポイントも全国の具体事例を交えながら、非常にわかりやすく解説している。最終章では、まち会社が中心となってそういった再生事業を展開していくための7ステップをまとめている。
本書は全体を通して、分かりやすく読みやすい。それだけに、著者のもつ危機感が非常によく伝わってくる。地方都市では、人口減少によってまちはいつ無くなってもおかしくない待ったなしの状況に追い込まれている。またその中で、まちの再生に取り組むには、今まで同様の規模対象にするのは無理で最終的に守り抜きたいエリアを決めて線を引く覚悟が必要であるという。この時間的・空間的な限界線をタイトルの「デットライン」は表している。1人でも多くの人にこの危機感を共有してまちづくりに取り組んでもらいたいという著者の気持ちが伝わってくる1冊であった。 |