団地再生の成功事例として、書籍等で度々紹介されている‘ライネフェルデ’。このドイツにあるライネフェルデというまちは、団地再生の聖地といっても過言ではなく、団地再生に携わっている人研究している人が一度は足を運ぶ(運びたいと思う)場所である。私はその両者にも属さないが、これまで書籍や大学の先生方から‘ライネフェルデ’という言葉を何度も耳にしていたため、以前からこの‘ライネフェルデ’に興味を持っていた。これまで、団地再生関連の書籍の中では一成功事例として取り上げられることがほとんどであったが、今回1冊の書籍として発売されると聞き、早速入手してみた。
ライネフェルデはかつて旧東ドイツの西側に位置する小さな町であったが、東ドイツ政府によりヨーロッパ最大の紡績工場が建設されたことで、またたく間に産業都市へと発展していった。人口2,500人だった町に労働者6,000人の工場が建設されたため、旧市街地の南側に団地が大量建設された。しかし、その後のドイツ東西統合をきっかけに、生産規模が縮小され多くの労働者が職を失い町から転居してしまった。そのため、団地には空家が目立ち、人口減少によりまちに活気がなくなっていった。こうした状況の中、ライネフェルデの団地再生が始まっている。
本書は、如何にして団地再生を成功させたか、歴史を踏まえつつその成功プロセスが記されている。また、直接団地再生に携わったライネフェルデ市長や当時の州内務省住宅局長などのインタビューも掲載されており、見事な行政的手腕にも感心してしまう。
ライネフェルデの団地再生は、単純に不必要となった住棟を取り壊すだけでなく、住戸の2戸1化や減築、共同利用施設への転換、緑地の創出などが計画的に行われている。本書の随所に掲載されている各団地の写真と改修方法から、再生手法が団地ごと住棟ごとで異なっているのがよくわかり、再生メニューの豊富さに驚かされる。また、市長が「まだ躯体は100年使える」と言っているように、先を見据えた団地再生のあり方についても参考になる。ライネフェルデが抱えていた人口減少、
空家の増加、少子化といった問題は、現在日本の多くの団地が抱える問題でもあり、日本の団地再生を考える上で様々なヒントを与えてくれる1冊となっている。
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