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京町家づくり 千年の知恵/山本 茂著
祥伝社/2003年12月20日発行
京都の町家がテレビや雑誌に取り上げられるようになって久しい。東京から京都の町家に移り住んだ著名人の生活の様を女性誌がこぞって取り上げた時期もあった。マンションが林立したバブル時には、町家が建っている土地は、家屋の除却費用分を減額して取引されていたが、今は、町家そのものに1000万円ほどの価値がつくという。
この本は、京都生まれの町家大工棟梁が、限られた土地を最大活用しながらも趣向を凝らす町家の技や知恵を、分かりやすい語り口調で書いたものである。メディアの力ですっかり見慣れ、聞きなれた「通り庭」、「紅殻(べんがら)格子」、「虫籠(むしこ)窓」など、町家を構成する部分部分を、造り・機能・名前の由来など事細かに解説している。私たち観光客は、京町家の表側は眺め、楽しむことができるが、中の造作を詳しく見ることはなかなかできない。それを、たくさんの写真やイラストで楽しむことができる。
また著者は町家をただ守るのではなく、住み手が快適であるのはどこを改善したらよいか、そして趣を残しつつ現在の消防法や建築法などたくさんの法規制とどう折り合って行くかに日々挑戦している。いくつかの具体的事例も取り上げられており、京都というまちで大勢の人が知恵を出しあっている様子がよく分かる。
しかし著者は、最終章で町家の将来は悲観的だと述べている。「こうした手仕事の大工は、もう時代遅れ。京町家大工はいずれなくなる。いまの近代的な工法を採用するひとしかおらんようになる」 今のブームの先に、人々が合理性よりも希少性に重きを置いて町家を再生保存しつづけるのかどうか、著者は悲観的ではあるが、この本を出すことで何か力になれれば、と結んでいる。
巻末に並べられた、100語を越える「町家大工用語集」は圧巻で、著者の想いの強さが伝わってくる。
(2004.3.4/竹内 郁)