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区画整理・再開発の破綻 底なしの実態を検証する
/NPO法人 区画整理・再開発対策全国連絡会議 編

自治体研究社/2001.10.25発行

 区画整理や再開発の実現が難しくなっているということは感じていたが、ここまで事態が悪化しているとは…。国家や地方財政の危機的状況に「将来は日本を脱出しなくては」と思ったこともあったが、危機的状況はそれだけではなかったのだ。隠れた不良資産のつけがどこにくるのかと考えるとおそろしくなってくる。

 本書では、区画整理や再開発が本来のまちづくりとしての目的を逸脱し、不動産経営的な側面を前面に押し出した事業が破綻した実態を生々しく伝えている。もともとは都市計画決定をしない民間の宅地開発として実施された区画整理が保留地が売れず、事業が成立しなくなる中で、補助金を投入するために、後追い的に都市計画決定を行っているような事例には、都市計画とは何かということを改めて問いたくなる。
 本書では、区画整理・再開発の破綻をもたらした要因として、資本原理の暴走、総無責任体制、大規模開発神話、公共性の欠如の4点が指摘されているが、この中で都市計画コンサルタントがどういう役割を担ったのかということは気になるところだ。幸いにというべきか、私はこのような破綻の状況に直面している区画整理や再開発に関わっていないが、それはたまたまだったともいえる。もし、このような事例に関わっていた時、時代の雰囲気に押され、ずさんな事業計画を立案するようなことがなかったと自信をもっていえるだろうか。
 破綻の状況は今も続いている。いや、無謀な計画が今も立案されているという。
今なら自信をもってNOということができる。失われた10年の損失は大きいが、歴史から学ぶことは多い。それを活かさないと日本に未来はない。子供達に日本を脱出を考えさせるようなことがないようにしたいものだ。
(2002.5.31/石田 富男)