昨年、「多数決を疑う-社会的選択理論とは何か」という1冊を紹介したが、その姉妹書として、学問や思想の歴史的経緯にあまり立ち入らずに、よりわかりやすい読み物としてまとめられたのが本著である。
日本の選挙で当然のように使われている単記式の多数決は少数派の意思が排除されるだけなく、多数派の意見でさえも常に尊重されるわけではないという弱点があることや、各候補に順位を付けて投票するといった優れた意思集約方法もあることなどが、実際の選挙や世論調査、簡単な例をあげながら、前書よりも非常にわかりやすく紹介されている。前書では、「多数決で決めた結果だから民主的」や「選挙で勝った自分の考えが民意」といった発言への反論を意図的に避けたそうだが、本著では投票の方法で選挙結果が変わることがあるため、多数決による選挙結果を勝手に民意と呼んではいけないという著者の考えが自然に理解できるように思う。
また、多数決を正しく使いこなすことは簡単なことではなく、決定する対象をあらかじめ制限しておいたり、小数派に不当な負担を与える暴力にならないように常に注意する必要がある点は非常に重要だと感じた。業務で携わるまちづくりや再開発の現場において、協議や調整を重ねても全員一致で合意できずに最終的には多数決に委ねる場合も多くあるため、この点は常に念頭に置いて業務に取り組みたいと思う。
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