Y県のエリート職員である主人公・野村はY県初の職員人事交流研修者として、つぶれそうな郊外のスーパーマーケットで1年間の研修を受けることになった。一般の人が想像する典型的な役人像と言うべき野村は、民間とのギャップ、マニュアルのない売り場で四苦八苦する。自分のキャリアに傷が付くのを防ぐために賞味期限の改ざんや避難路に置かれる荷物の山に対して意見書を提出し改善を申し出るが、受け入れてもらえない。代わりに提案されたのが、賞味期限内の食材で惣菜をつくるチームのリーダーとなり、従来の方法で惣菜をつくるチームと売上利益を競うというものであった。
この物語の素晴らしいところは、単なる公務員批判の本ではなく、公共と民間の対比をコミカルに表現し、野村だけでなく教育係を命じられたパート職員である二宮を始めとした従業員の成長・変化によって、スーパー全体が改善し、売上が増加していく様子が描かれている。そこには、公共と民間が互いに足りない部分を補完し合う美しい関係を感じた。また、この本を読んで、賞味期限の改ざんの裏にある真実「逆改ざん」をぜひ知って欲しい。
話は変わるが、同名の映画が本年2月に公開予定である。県庁のシーンは香川県庁、スーパーのシーンは岡山県高梁市の実在するスーパーで撮影され、2つのロケ地にはともにフィルム・コミッションという組織が存在している。フィルム・コミッションは地域経済・観光振興に大きな影響力を持つ映画、テレビ、CMなどの様々なロケーション撮影を誘致し、スムーズな撮影のために地域情報の提供や、撮影許可手続きの代行、エキストラの手配などの支援を行う非営利公的機関で、市町村や商工会議所などによって5年間で83の団体が設立されている(平成17年11月10日現在、全国フィルム・コミッション協議会加盟団体)。また、このフィルム・コミッションは、海外からの映画撮影が少ないことを危惧した映画・マスコミ関係者が中心に設立活動を行ったのが始まりである。小説同様、公共と民間が補完し合う関係は美しい。
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