建設業者という硬い印象を受けるタイトルとは異なり、建築に関わる職人へのインタビュー集で非常に読みやすい。ゼネコンの下請けとして働く職人から、宮大工・社寺板金のような伝統的建造物に携わる職人まで、計37名の職人に対するインタビューをまとめた「職人ドキュメント」の完全版だとの宣言にも十分納得できるほど充実した内容である。
鳶や左官といった職人はお聞きになったことはあると思うが、解体工やウレタン吹き付け、カーペット張りといった専門的な職人がいることをご存知の方はあまり多くないように思う。私も大学等で、建築の施工に関する工法などを勉強してわかったつもりでいたが、想像以上に分業化されていてこんな職人もいるのかと驚くとともに、それぞれの職人の本音や彼らの飾らない言葉での苦労話には非常に好感を持てた。
本著で紹介される職人の方々の多くが、施主や近所の方や他の立場の職人に対して気を遣い、いかに気持ちよく現場で作業できるかを考えながら、自分に与えられた仕事の質を高めるための努力をしていることは見習うべきである。また、プライドや信念といった大げさなものではなく、やるしかないといった覚悟や照れ隠しが感じられる言葉や、自分の腕や勘を頼りに生き抜いてきた重みのある言葉が数多くあり、ぜひ読んでいただきたい一冊である。 |