第1部が住まいと金融、第2部が住まいと税制の2部構成で、それぞれ建築に関する仕事をしている2人の女性が忌憚のない質問をぶつけ、それに専門家がわかりやすく回答・解説をするというやりとりとしてまとめられているのがこの本である。
建築に携わる人であっても住宅ローンなどの「金融」、相続税や消費税などの「税制」が苦手であると感じていたり、わかったつもりになっていたりする人も多いのではないかと思う。「何人にもわかりやすいこと」を一番に心掛けたというように、「金融」や「税制」のそもそも論から始まり、制度の成り立ちや歴史的経緯も含め、「住まい」とそれらとの関係性の基礎について解きほぐした説明がされている。
著者のうち3人は、一般社団法人移住・住みかえ支援機構の役員であり、大学教授でもある。各部の後半の章では、新たな住宅金融による住まい方の可能性やこれからの税制について、住まいだけでなく社会全体をどう変えていけば良いのかという3人の熱い想いが伝わってくる。
一方、4人目の著者は建築関係のライターではあるが、3人の子どものママとして、また一人の住民として率直な質問を投げかけていることが、この本のわかりやすさに大きく貢献しているように思う。また、各章の最後には彼女の感想が述べられているのだが、「住宅ローンの経済的合理性も理解できました。ただそれでも、『では積極的にローンを組んで家を買いましょう!』という気持ちになれないのが、正直なところです」、「漠然かつ猛然と税金を出し渋るのではなく、まず自らが知る努力を、住まいに関わる私たち建築関係者から始めていきたいと思います」といった正直な感想にはとても共感した。
情報量も多く、読み進めるのに少し時間はかかるかもしれないが、是非手にとっていただき「住まいの金融と税制」の基礎を理解・再確認していただきたいと思う。 |