最近刺激的な書籍が出版されました。いずれも世の中に流布された「思い込みの常識」を覆すものです。
《景気:デフレの正体/藻谷浩介》
ひとつは藻谷浩介氏の「デフレの正体」(角川oneテーマ21 ¥760)です。かれは全国を歩き回り地方の実態をつぶさに観察しながら、同時に全数調査の公表統計データを基本に据えて、経済動向等を分析し、提言するのに定評があります。好況だと言われながらも売り上げは落ちる、不況だと言われればなおさら落ちるという現状は、景気循環で決めつけられない何かがそこありそうです。現役世代が減少し、国民が稼ぐ給料総額は大きく落ち込み、ストック豊かな高齢者が増えるとモノやサービスは売れなくなり、デフレが進む、その要因は「人口の波」であると。国際競争力が強まって貿易黒字でも、輸出企業やその株主である高齢富裕層の懐に落ちて、庶民にはほとんど影響がないという実態を指摘しています。日本経済にとっては「個人所費が生産年齢人口減少によって下ぶれしてしまい、企業業績が悪化してさらに勤労者の所得が減って個人消費が減るという悪循環」を断ち切ることが重要であり、そのための処方箋、@高齢富裕層から若者への所得移転、A女性の就労と経営参加、B外国人観光客等の受け入れが示されています。 |