私が子供のころは、商店主は地域の一員として居住者ともに地域活動に参加していた記憶があるが、いつしか、商店街は商店街組織として自治体の助成を得て、独自の活動を展開することが一般的となった。思うに、それは、「商店街振興組合法(昭和37年)」が制定され、縦割り行政のもとに、商業施策が充実されていった頃からではないだろうか。商店街を中心としたまちづくり・再開発にかかわっていると、商店街と「まち」との関連が薄く、地域住民からは「なぜ商店主の金儲けのために住民が協力せねばならないのか」という声がかつてはよく聞かれた。
しかし、近年、商店街の活力の低下に伴い、商業者がリスクを負った起業者であるべき「商人」としての自覚を喪失しつつある中で、地域住民を含む市民の自主的−著者の言葉を借りるならば、自主性の中には自らの負担(投資)が含まれる−な商店街変革の活動が始まりつつある。我社のかかわりの中でも、西春駅前商店街の女将さんの会「999隊」の活動、津島市「GOZの会」や岐阜柳ケ瀬商店街の「祭GIFU百人衆」の活動などがあげられる。
本書では、山形県・高島町や前橋市での市民が主体となって商店街を花と緑で飾る活動、足利市でのNPO足利まちづくりセンターの活動、商店街で学校給食から宅配まで手がける事業に乗り出したことで有名な足立区・東和銀座商店街(アモール東和)の活動などが、関係者へのインタービューを踏まえて紹介されている。まちづくり主体者の含蓄のある言葉は、補助金行政に慣れ、自己責任を忘れたこれまでの商店街活動やハード先行の街づくりのあり方を問い直す意味で大いに参考となる。 |