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条例によるまちづくり・土地利用政策
−横須賀市が実現したまちづくり条例の体系化−/出石稔 著
第一法規株式会社/2006年9月15日

 地方自治体が制定する条例は様々だが、特に土地利用に関して横須賀市が制定した条例がどのようなものなのかを解説したのが本書である。土地利用に関する条例について情報収集する中で本書を手にしたが、横須賀市は「まちづくり条例の体系化」という観点で全国的に先進的な事例となっているのだ。
 横須賀市では、他の地方自治体の例に洩れず、現行の法規制だけでは十分に対応できない土地利用に関する様々な課題(例えば、斜面地における高層マンション建設に伴う事業者と住民間とのトラブルの発生など)を抱えている。その課題に対応すべく「地域の実情に適した」個別のまちづくり条例制定を進めることとなった。そして個別の条例をただ単に複数制定して終わりとするのではなく、それぞれの条例が相互に関連する「土地利用調整関連条例」として体系化する方法を選択した。具体的には、土地利用を進める上での理念や基本方針を明記した「横須賀市土地利用基本条例」が関連条例の核として存在し、その下に個別条例がぶら下がる格好となっている。個別条例は現在全部で7つあり、例えば「適正な土地利用の調整に関する条例」は具体的な土地利用に関する詳細な基準を明記する役割を担い、「特定建築等行為に係る手続き及び紛争の調整に関する条例」は一定規模以上の建築等行為を行う者に対して義務づけられ住民説明などの手続きについて明記する役割を担っている。
 他の自治体の事例として「練馬区まちづくり条例」は横須賀市とは異なったアプローチをし、全部で153か条というスケールを持つ土地利用に関する条例を制定している。著者が「一本化あるいは総合化と、体系化のどちらが分かりやすいかは、意見が分かれるところ」と書いているとおり、正解がどれかということは決めることはできないだろう。しかし個人的には本書を読むことによって横須賀市の条例体系化は1つの合理的な回答であることは間違いないだろうと感じたし、何より課題解決に向けて改革を継続することの重要性を感じることができた。土地利用条例のあり方を考える上で非常に参考になる一冊である。

 (2016.8.15/大河原 章介)