現在の位置:TOP>まちづくりを学ぼう>図書紹介>秘められた名古屋 訪ねてみたいこんな遺産 WWW を検索 スペーシアサイト を検索

 

秘められた名古屋 訪ねてみたいこんな遺産/
水野孝一・粟田益生・冨永和良・水谷栄太郎・小宅一夫・山田和正 著
 風媒社/2015年12月25日発行

 名古屋市が「魅力のない都市1位」になったとして、各メディアで話題になった。これは、名古屋市観光文化交流局が全国主要8都市(札幌市、東京23区、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、福岡市)を対象に行った都市ブランド・イメージ調査(平成28年6月実施)による。名古屋市は、「買い物や遊びで訪問したいか」の項目で圧倒的最下位、「最も魅力的に感じる都市」の項目で名古屋市民からも支持を得られないなど、不名誉な結果となった。
 この結果を受け、名古屋市が市民を対象に行ったネット・モニターアンケート(10月実施)では、訪問意向が最下位であることに関して「残念だが仕方がない」が約6割、「当然と思う」が約2割を占めた。
 2つのアンケートを通して、多くの名古屋市民が自分の住む都市に魅力を感じていないことが明らかになった。これは、今後のシティプロモーションを考えるうえで大きな課題である。「(訪問意向最下位は)当然と思う」と答えた理由として、「象徴的な建造物やまちなみがないから」が約6割、「歴史が感じられないから」が約4割を占めた。しかし、産業都市として栄えている名古屋にも歴史的な文化遺産は数多く残されている。名古屋市民が名古屋の魅力を自覚するためには、まちなみに残されている歴史を知り、シビックプライドを高めることが必要なのではないだろうか。
 そこで、この本『秘められた名古屋 訪ねてみたいこんな遺産』を紹介したい。これは、平成25年度の名古屋都市センター市民研究員がまとめた研究報告『那古野まち歩き新発見』に、追加取材を加えて再編集したものである。名古屋城築城に伴う清須からのまちぐるみの移転「清須越し」や、熱田神宮に伝わる楊貴妃伝説など、身近な歴史遺産を多く紹介している。筆者の一人水野氏は、名古屋最古の民間企業「鍋屋」の現当主である。水野家は信長の朱印状を得て鋳物業を営み、清須越しも経験した伝統ある旧家である。
 そんな職人気質な筆者らが自ら名古屋を歩くことでまとめたこの本は、マニアックでこだわりのある一冊となっている。名古屋市在住の人、名古屋の歴史を感じたい人、もしくは名古屋を極めたい人にはぜひ読んで、現地に足を運んでいただきたい。きっと、名古屋の魅力を再発見できることだろう。
(2016.12.13/日高史帆)