「宇都宮と聞いて、何が思い浮かびますか。」という質問を受けたら、多くの人が「餃子」と答えるのではないだろうか。しかし、20年前に行われた街頭アンケートによると宇都宮市民の7割の人が先ほどの質問に「何も思い浮かばない」と答え、「餃子」と答えた人は1人もいなかったそうである。また、餃子が好きであると答えた人は9割以上、月に2回以上餃子を食べると答えた人は6割以上いて、「餃子」は宇都宮市民にとって美味しいと思って食べていても名物とは思っていなかったようである。そんな「餃子」が10年も経たずに全国的にも知られる名物になり、その後10年経っても宇都宮餃子ブームが衰えていないという町おこしの成功の過程が非常に詳細に書かれているのが本書である。町おこしから離れていった餃子店の存在やテーマパーク「宇都宮餃子共和国」の失敗などについても包み隠すことなく書かれていることには好印象を受けた。
「餃子で町おこし」が成功した秘訣はタイトルにあるように官民一体で取り組んだことである。あるひとつの案件を長期間継続的に支援することが不可能な行政、町おこしをすること自体が多大な自己犠牲となる民間という性質の異なる主体が一体になって町おこしをすることは簡単なことではない。また、宇都宮餃子会の立ち上げから始まり、ニセ宇都宮餃子問題、協同組合化、実験店舗の営業譲渡などさまざまな困難にも官民一体で乗り越えている。官民一体で取り組むことができた背景には、「日本一の餃子の町」という誇りと「餃子で宇都宮を活性化する」という熱意を当事者が常に持ち続けていたことが大きな要因としてあったように感じた。
宇都宮の餃子店は町なかに点在し、一口サイズの餃子が5、6個の一皿が200〜300円という安さであるため食べ歩きに適している。餃子会組合店では、二人でひと皿を注文するのも当たり前のことで、嫌な顔をされないという。ぜひ宇都宮を訪れて、餃子の食べ歩きをしてみたいと思わせる一冊である。
<関連ページ>
「うどんの国 讃岐」 http://www.spacia.co.jp/Mati/sisatu/2006/sanuki/index.htm
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