本著は、東北芸術工科大学教授でもあり、「みかんぐみ」共同代表の建築家である竹内氏が、原子力発電所やエネルギーに関する様々な専門家8名に対して行ったインタビュー集である。元原子力格納容器設計技術者、前福島県知事といった福島原発事故以前から問題を認識していた専門家だけでなく、スマートグリッドやコージェネレーションシステム、再生可能エネルギーなど今後確立する技術の専門家にもインタビューをしており、「単なる原発への反対表明としてだけではなく、次への希望も感じながらお読み頂けたら幸いです。」という著者の考えがよく表れている。
「もし、もっと原発やエネルギーのことをちゃんと知っていて、何らかのアクションを起こせていたらこの事故は防げたのではないか。(略)そういう無自覚な行動が、将来に問題を残すなら、それは知らなかったで済まされる問題ではない。(略)無自覚であまりにも都合のいい豊かな状態に安住していたことが事故の遠因になっていやしないかと考え始めている。」という考えから、直接会って取材し、本を書くことで自分の意思を明確に表明するに至った点は素晴しいと思う。
また、「この本には、結論めいたものはないし、私自身もまだ変わり続けるだろう。この本の読者と共有できたら幸いである。」と書かれており、事故を機に原発と建築の関係を初めて強く認識した著者が、インタビューによって率直な疑問を投げかけながら建築家としてできる解決方法や方向性を探るだけでなく、印象的に残った点などをレビューとして簡潔にまとめているので、理解がしやすく好感が持てた。
「今、私たちに必要なのは、問題があることを認識し、自分で情報収集して考える、そして考えたことを人と共有することだと思う。そうしていくと社会の根幹の部分の成り立ちをも考えなくてはいけない。」という著者の考えは、原発に限ったことではなく、あらゆる課題解決のために実践すべきことだと感じた。 |