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「限界マンション−次に来る空き家問題−」/米山秀隆 著
日本経済新聞社/2015年12月16日発行
空き家問題と聞くと老朽化した戸建ての木造住宅を思い浮かべる方も多いかもしれないが、近い将来、深刻化な問題として予想されるのが分譲マンションであるそうだ。建物の老朽化と区分所有者の高齢化という2つの老いにより、空室化が進み管理が行き届かなくなり、建替えることもできずにスラム化に至る「限界マンション」が今後大量に出現すると著者は指摘する。マンションが生まれた歴史的経緯や普及した理由なども丁寧に解説されており、そして「限界マンション」を防ぐ方策も述べられている。
既存マンションの多くが建替え困難になる可能性を考慮すると、現行の建替え規定(区分所有法の4/5以上の建替え決議)に加え、区分所有権を円滑に解消するための規定を設けるべきだと著者は考えている。確かに、建替えて同じ場所に住み続けることに限定するのではなく、区分所有権を解消して、住み続けたい人が集まって土地を買い取り新たな共同住宅を建てることや、第三者に高い値段で土地を売却するという選択肢があっても良いと思う。また、建替えではなく区分所有権の解消によって、都市全体としても周辺街区との連携やその時代にあった有効な土地利用が図れる可能性もあると思う。
そして、今後のマンション供給については、これまでの区分所有権付きの分譲マンションの所有か、質の悪い賃貸マンションの利用という両極端な選択肢しかない状況を打破する必要があり、定借マンションや永住型賃貸マンションなど新たなマンション供給の仕組みも加え、住む人の価値観やライフスタイル、所有か利用のどちらを重視するかにあわせて、満足できる選択肢が用意されることが望ましいと述べている。
マンション建替えや区分所有権について改めて考えさせられる一冊であり、ぜひ多くの方に手にとっていただきたい。
(2016.12.19/山崎 崇)