地産地消、食育などに代表されるように、食に関する取り組みが各地で行われている。これは、食品偽装、毒物や異物混入といった事件が相次ぐなど、食の安全に関する問題が背景のひとつとしてあげられよう。その一方で忘れてはならないのが、深刻化する地球環境問題の点でも食を考えるべき時期にきていることである。このことを、フード・マイレージという概念でわかりやすく解説しているのが本書である。
フード・マイレージについて本書では、「食べ物の量×運ばれてきた距離、つまり食べ物がどれだけ遠くから運ばれて、そのためにどれだけ二酸化炭素を出してきたかがわかる数字のこと」と説明している。この仮定で各国の輸入食料のフード・マイレージを計測したら、日本は約9千億トン・キロメートルとなり、隣国の韓国や大輸入国であるアメリカの約3千億トン・キロメートル、西欧各国の約1千億トン・キロメートルと比べて遥かに大きいという。この理由として、食料の輸入量の差はそれほど差はないものの、平均輸送距離が約1万5千キロメートルと、アメリカの2.4倍、イギリスの3.5倍などと比べて極端に長いことを指摘している。
また、フード・マイレージを使い、学校給食で地産地消の食材を取り入れている埼玉県の中学校の事例、あるいは熊本県の農家の食育体験の事例など、幾つかの事例で試算を行い、市場流通に委ねた場合と現在とで比較している。その結果、事例により大小さまざまであるものの二酸化炭素の削減効果は確実に出ているという。
ライフスタイルが多様化する中、帰農や田舎暮らし、市民農園、家の鉢植え、それも面倒であればせめて地元の食材を商店で購入するなど、その人ができる形で地産地消に取り組む方法があると思う。フード・マイレージという概念に興味を持つかどうかに関わらず、食のあり方、地域のあり方を考える上でも本書は参考になる。
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