まちづくりを考える上で、街路樹などの緑をどのように計画し、何を植えるかは、街の景観をはじめ、潤いや憩いの提供、ヒートアイランド現象の緩和、生物多様性などいろいろな視点から検討する必要がある。
その中で、1つ加えてもよいのではと思う視点を紹介したい。それは街路樹の事故である。
本書は道路管理者向けの街路樹管理全般の専門書であるが、後段でその事故について詳しく書かれている。そこでは街路樹(道路植栽)が原因となる事故にどのようなものがあるかを類型化し、それらの事故の様態ごとに裁判事例を示しながら、リスク管理のあり方を解説している。例えば、
・樹木の枝が折れて落下し歩行者を直撃した事故
・根元の腐朽により街路樹が倒れて自動車を直撃した事故
・大木化して道路にはみ出した幹や枝が自動車に接触した事故
など、その他にも多くの例が挙げられている。これらの倒木や枝折れ、接触などの事故の原因は、樹木が植えられてから何十年と経って大木化、老朽化したことによることが多い。
しかし、その発生のしやすさは樹種によって異なるという点に注意したい。例えば、エンジュやプラタナスは倒木が起こりやすい、ケヤキは枝折れが発生しやすい、ソメイヨシノは枝が横に広がりやすく接触事故が起きやすいなどが挙げられている。本書では、そういった樹種ごとの事故リスクの違いを見据えた予防的な維持管理の必要性を中心に解説しているのだが、まちづくりを計画する段階でもそれらの特性を知った上で、樹種を選んだり、維持管理を想定したりすることが求められると思う。例えば、単純な話だが、住宅街の狭い道路にソメイヨシノを植えると、将来、道路空間へ枝が張り出すことが予想されるため、避けたほうがよいといえる。
まちづくりの中で、単に“緑”とひとくくりにして語られがちな街路樹だが、樹種ごとの特性まで細かく見ながら、考えていくことも必要なのではないだろうか。
|